─ピーッ!!


水瀬先生の吹いた笛で、優翔がボールを高く上げた。


私と、龍樹。二人同時に足が床から離れた。

それと同時に、私は無詠唱で、足元に上向きの風を素早く吹かせ、高く飛び上がった。


コンマ一秒の差で、龍樹も高く飛び上がってきた。


身長的に考えても、龍樹のほうが大分有利。


……だけど、私はそれを魔法でカバーした。


龍樹の回りの圧力を操り、「ゔっ…」と一瞬、苦しげな声を上げる龍樹を、上から押さえつけた。


魔法に込めた霊力も、ほんの少し。


…ただ、私の得意な無詠唱だから、質が高かったようで、ほんの少しの霊力でも、龍樹のジャンプを阻止することが出来た。


高く跳んだ私は、目の前にあるボールを、葉月の方へパシりと叩いた。


その瞬間、優翔がボールの軌道をずらそうと、物凄い勢いで水を飛ばしてきた。


「葉月!!」


私が叫ぶと、葉月はコクリと頷いた。


「禁っ!!」


葉月が唱えると同時に、ボールへと迫っていた水が、まるで壁でもあるかのように、バンッと跳ね返った。