『由真川棗さん?今すぐ前に───…』
周囲がざわつき始める。
後ろから、クスクスという笑い声に混じって、話し声が聞こえる。
こっそりと見てみると。
「棗っ!!
起きて、ほら!!挨拶、するんでしょ!!」
あの女の人の隣に座っていた人が、女の人を必死に起こそうとしていた。
(あの人…由真川棗さんっていうんだ)
ハラハラしながら見ていると、由真川さんはやっと起き、フラフラと前へ向かっていった。
そして、マイクをとったかと思うと。
『入学式長いっ!!
眠いので、これにて解散んんんんんんっ!!』
そう言って、体育館から出て行ってしまった。