「さて、お仕事お仕事」
現在は倫敦市にいるサーカス団《イグレシア》。
そのサーカス団にはある噂がある。
《イグレシア》が通った町は幸せになる。
そんな噂。
何を馬鹿なとヒトは言うけれど、確かに私たちは幸せを町に運んでいる。
団訓《客と死者に楽しみを》にそって。
「あの!」
夜の倫敦市を散策していると声をかけられた。
「なんでしょう」
振り返ると女性。
おどおどとしていたものの、静かに待っていると意を決したように話し出す。
「《教会》……の方でしょうか」
「ええ。そう呼ばれることもあります」
「そう……ですか」
ほっとした顔をする女性。
早速お客様らしい。
「わたしたちも、助けていただけますか?」
「私どもの団訓をご存知でしょうか」
「……いいえ」
「サーカス団《イグレシア》の団訓は《客と死者に楽しみを》です。……あなた方に楽しみを」
ふわりと笑う。
相手が安心するように。
安定するように。
楽しんでもらえるように。
首を傾げる女性。
言葉を繋げる。
理解してもらえるように。
納得してくれるように。