テントの中。
サーカス団員が自由に使えるそこでは移動終了を記念した打ち上げが行われていた。
……飲みたかっただけとも言う。
「かんぱーい!」
誰かが声をあげればそこかしこで復唱される。
ノリがいい団員が多いのも困りものだ。
曲芸師はここぞとばかりに芸を惜しみ無く披露しているし、子供らはそんな大人たちを無視してきゃっきゃと遊んでいる。
曰く、打ち上げで披露するために練習している。
曰く、打ち上げのときはいつまで起きてても怒られない。
……これでいいものか。
「まあ、いいのか」
呟いて立ち上がる。
外へ行こうとすると声をかけられた。
「フミ、どこ、行く?」
小さな女の子。
団員の子だ。
「《教会》にね、ちょっと行ってくるよ」
わしゃわしゃと頭を撫でてやってから外に出る。
中からよろしく頼むだの気を付けろだの声が聞こえるが酔っ払いの戯言にしか聞こえない。