サーカス団《イグレシア》



彼女は知らない。
自身の生まれも名前も。
聞けばあっけらかんと答えるだろう。
家族がくれた名と家族ができた日を。
彼女にとっては家族が全て。
彼女の全ては家族の為ある。
しかし。
これから彼女が会うのは《物語》。
彼女は否応なしに巻き込まれる。
家族の為に、家族を護るために。
彼女の全ては家族の為だった。
彼女にとっては家族が全てだった。
これから出会う家族でないものは彼女にどんな変化を与えるのか。
彼女は考えるべきだった。
彼女の愛する団長が倫敦市に来た理由、眠りについた、その理由を。