団長が本名を言っていればそれも防げるのだが、とウラはいつものように嘆く。
私にも聞かせているのは明らかだ。
これでもウラは自身の占いにプライドを持っている。
不十分な情報で占いをすることは心底嫌うことなのだ。
私と団長は例外中の例外。
いやみぐらいいくらでも聞き流す。
うん。聞き流す。

「今日、夕方《教会》に行くことだ。そこでの出合いを大切にするといい。君のためにも、あの人のためにも、《イグレシア》のためにもな。……それと」

ウラは迷っているように見えた。
占いのことで言い淀むのは珍しいことだ。

「なに?」
「……フミは、悪意に会うだろう。複数だ。しかし、それが何を意味するのか、僕にはわからない。道は見えない」
「それは、その悪意が団長を眠らせた原因かもしれないということかしら」
「わからない。そうかもしれないし、違うかもしれない」

ウラは明言を避けた。
正しい判断だ、と思えた。
もう、体温が上がっている。
これ以上はいけない。
団長が、家族が関わると私の沸点は低くなる。
簡単に沸騰する。
怒ると判断が鈍る。
団長にも弱点だと言われ続けているけれど。
……団長。
眠り続ける、団長。
代われるならばいくらでも代わるのに。
団長のことだ、避けようとすれば避けられたはず。
それを甘んじて受け入れたのはきっと団のため。
私が冷静さを失うことで団長の想いが無駄になることは許さない。
悪意がどんなものであれ、すぐさま壊すことはできない。