電車のカレ




人の波が治まるまでがとても長く感じた。


電車内から押し出され、戻ることもままならず、ホームに取り残される。



未だに、彼に腕を掴まれた状態。


そのことに気付くと心臓が再び脈打ち始めた。


助けてもらった身。



自分からその手を振り払うことなんてできない。


いや、しようと思わなかった。


だって、これがチャンスだと思ったから。



彼との関わりを持つ絶好のチャンス…