新書の書架は、古書のそれほど密度がない。書籍の背が棚を埋めてはいるものの、質量は古書をうんと下回っている。書架の数自体、古書の四分の一もないのだ。
そんな数少ない新書の書架の一番奥に、下段だけ棚板を一枚外して大判の書籍を納めている。図鑑や児童書、画集など、店内で唯一ジャンル分けされていない区画だ。
その中から私は一冊の本を迷いなく抜き取った。
横長の、夜空が描かれた表紙。
夜露に煌めく草花、瞬く星。
天を走る列車を、ふたりの少年が見上げている。
宝石を散りばめたような、美しい装丁。
児童書としては比較的大きなそれを、縁に手渡す。
本を受け取った彼女は、小さな感嘆の息を溢した。
「綺麗……」
「だろう?」
「『銀河鉄道の夜』ね。とても好きなお話だわ」
縁は表紙を開き、ページを捲る。
ページが進むに連れて、縁の表情がみるみる明るくなった。幼い子どものように瞳をきらきらと輝かせる彼女を見て、この本を勧めてよかったと思う。



