ときめきに死す


「――って、次会うまでって、」
「ちょっとの間、来られなくなるの。締め切りがね……」
「締め切り?」

 ううん、なんでもない。
 縁はひらひらと両手を揺らした。
 答える気はないらしい。追求しても躱されてしまうのは目に見えているから、深追いは止した。

「お茶とケーキ、ご馳走さま。なるべく早く済ませるから、次は恋人らしくおうちデートしましょうね!」
「な……っ!?」

 顔面がかっと熱くなる。
 そんな私を余所に、縁は軽やかに玄関まで駆けて行く。

 からんからん。
 ドアベルが鳴った。

 不意に少女は振り返って、

「かぁがみくん!」

 歌うように呼び掛けた。

 私は反射的に席を立った。

「好きよ。だぁい好き!」

 満面の笑みでそう叫ぶと、そのまま踵を返し駆けて云った。

 少女の背中が遠くなる。

 私は放心して、浮かせたばかりの腰を再び椅子に沈めた。