ますます意味が分からない。
呆れずに居てくれたらしい縁は、私の中で絡まった糸を解くための言葉を紡いでいく。
「ここの書架はどれも、作者は五十音順に、タイトルは発行年順に並んでる。とても正確に。だから、書架を見れば分かるの、加賀美くんがどんな順で本を読んでいるのか。加賀美くんの性格を考えたら規則性があるってことは予想出来るし、右端下段の本の次に読んでる本が左端上段なら――」
「推して知るべし、か」
なるほど、名探偵である。
縁はふうと小さく息を吐いた。
「だからね、加賀美くん。加賀美くんは、凡庸なんかじゃないのよ。寧ろ非凡だわ」
非凡な少女に太鼓判を押されてしまった。
のみならず、
「だからもっと誇るべきよ!」
縁はいつもの口調でそう宣言した。
私は再び脱力した。



