「そういう君は、」
意を決して、問う。
「君は、僕の何処を好きになってくれたんだい。なんの取り柄もないこの僕の」
知りたい。
けれど知りたくない。
相反するふたつの感情が、複雑に絡み合う。
縁はきょとんとした顔をして、ぱちぱちと長い睫毛を上下させた。けれど次の瞬間には、口角を上げた。静かな微笑みに、飲まれる。
少女の答えを、聞きたくないと喚く耳で私は待った。
「加賀美くん。いいことを教えてあげる」
薔薇色の唇が囁く。
「本当に好きなものに、詳細な理由なんて必要ないのよ」
さあっと目の前が白んだ。
「勿論、挙げようと思えば『ここが好き』って云える。幾つでもね。それはひとによって、外見だったり、優しさだったり、ものの好みが一緒なことだったり。けれど、それが好きの全てじゃないでしょう?」
縁は大きな瞳を僅かに細め云う。
つまりね、と大人の表情をした少女は笑みを濃くした。
「わたしはあなたをもっと知りたいと思った。だからあなたを好きになったの」



