からからとした少女の笑い声が店内に響く。お腹を抱えてて俯く彼女の目尻には、涙が溜まっているだろう。勿論、笑いすぎで。
「……そんなに笑わなくてもいいじゃあないか」
「だって、くくっ、ふふふ……!」
「君には分からないだろうけれども、僕は酷く葛藤し、煩悶したんだ。下手したらロリータ・コンプレックスのレッテルを貼られていたかもしれないんだぞ」
「あはは! でも、漸く分かったわ。告白してくれなかった理由」
縁は飛び切り楽しそうに笑みを浮かべ、僕の頬をつっついた。
「自惚れでないなら、それはわたしのためでもあったはずよ。いたいけな子どもに手を出す訳にはいけない。それと同時に、待つつもりでもあったんじゃない? わたしが大人になっても翡翠書房に通い続けていたら。そうしたらきっと加賀美くん、あなたはわたしにちゃんと想いを伝えてくれていた。……違う?」
ぐうの音も出ない。
胸の内を見透かされているようで、寒気すら感じる。
「……なぁんて、半分はわたしの願望なのだけれど」
そう云って肩を竦める少女の顔が、初めて歳相応に見えた。



