ときめきに死す


 悪戯が成功した子どものように、縁はくすくすと笑った。

「でも、どうして? わたし、楽しみにしてたのよ。いつ云ってくれるかって」

 カウンターに頬杖を突きながら、片方の手で銀のフォークを弄ぶ。
 私は観念して告白した。

「だって、君と僕じゃあ歳が違いすぎるじゃないか。理性が働いたんだ」
「変なの。たった六つしか違わないじゃない」
「気にするさ。一回り以上違うんだ、――え?」
「え?」

 何処か変だ。齟齬がある。

 ……まさか、

「……縁、君、歳は幾つだい」

 背中を一筋の汗が伝う。

「二十四歳よ。今年で二十五歳になるけれど、云ってなかった?」
「聞いてないよ、ひと言も……」

 私は一層脱力した。