佐藤さんのその視線に、なぜだか私は釘つけになった。



なんでだろ?



言葉を口にしながら、ほんの少し崩れた表情。



愛想笑いとかそんなんじゃあなくて、でも、それに近いのかな?


とにかく、仕事中には絶対みせないであろうその遠慮がちな笑顔。


何となく儚げで、それがキュンと胸を締め付ける。



「あのー、大丈夫ですか?蒼井さん」



私はそう佐藤さんに声を掛けられ我に返る。



いけない、私そんなに飲んだつもりはなかったけど、酔ってるのかな?



だから、こんなに佐藤さんに見惚れるちゃうのかな?



「……だ、大丈夫」



なんとかそれだけ答えると私は佐藤さんから目線をずらした。



そして、揺れる電車と右肩の重みに現実を感じた。



やっぱり、少し飲み過ぎちゃったかな?



それから暫く、私達は無言のまま電車に揺られた。



佐藤さんの降りる駅も私の降りる駅も、まだ辿り着くまであと少し時間がある。



何か話した方がいいかな?そんな考えも浮かぶけど、佐藤さんと何を話していいか実を言うと分からない。



でも、何となく話したい。そう思った。



「蒼井さん、あのー、聞いてもいいですか?」