恋に堕ちたら



「おい蒼井、佐藤くんが話し掛けてるぞ!」


「ん、ふぇ?」



モグモグとサラダを食べていると、隣に座る上司がツンツンと私を肩先をつつく。



私は否応なしに上司の方へ振り返ると、またまた上司のあきれ返った声が聞こえた。



「色気より食い気か!?もう蒼井もいい加減いい歳なんだから食い気ばかりじゃあ可愛げないぞ!!」


「………」



そんな事、上司のあなたに言われなくとも十分承知致しております!



なーんて、この人の前で言えたらどんなに胸の内がすっきりするだろ!?



まぁ、いつもだったら言っちゃうけど、佐藤さんの前じゃあね。




……えーと、奥田課長、そう言えば今『佐藤くんが話し掛けてる』とか言ってたような。



私は慌てて口の中の物を飲み込むと、目線だけ佐藤さんの方に向けた。



佐藤さんもそんな私を見ていたが、『やっぱり後でいいです』と言いすーっと目線をずらした。



一体なんだったんだろ?


佐藤さんのその行動は気になる所ではあったが、それっきり話し掛けてくる事もなく、いつの間にか歓迎会はお開きになった。