凪とスウェル

フェリーが到着し、客室に乗り込むと、八神は後ろの方の座席の窓際に腰掛けた。


あたしはひとつシートを空けて、腰掛けた。


しばらく黙ったままのあたし達だったけど、あたしはチラリ八神を見た。


「ごめんね、八神」


「あぁ?」


ビックリしたような声を上げる八神。


「どうした?急に」


身体を屈めて、あたしの顔を覗き込む八神とバチッと視線が絡み合う。


あたしは一度小さく深呼吸をした。


「あたし、知らなかったの。

八神が、どんな思いでこの島に来たのか…。

最初に会った日、あたし不満ばかり言ってたでしょ?

アンタからしたら、あたしって腹の立つ存在だったろうなって思って。

ほんと、ごめんね…」


しばらく八神はあたしを見たまま固まっていたけど、急にふっと表情を緩めた。


「お前、やっぱ。

キヨさんの孫だよな」


そう言って、柔らかく微笑んだ。