凪とスウェル

「俺ら、付き合ってるんだ」


「「えぇっ?」」


あたしと湯本さんが同時に声を上げた。


「つ、付き合ってる…?」


明らかに顔が引き攣っている湯本さん。


違うよと言おうとした途端、八神がぎゅっとあたしの手を強く握った。


「今日、俺から告白してさ。

OKもらったから、初デートなんだ」


開いた口が塞がらない。


八神、あんた一体何言ってんの?


チラリ湯本さんを見てみれば、目にいっぱい涙を溜めていた。


「そ…うなんだ。

ジャマして、ごめんね…。

じゃ、じゃあね」


そう言うと彼女は、自転車を漕いで行ってしまった。


あたしと八神はその後ろ姿を、見えなくなるまでじっと見ていた。