凪とスウェル

師匠はにっこり笑うと、目尻に深いシワが刻まれる。


今日はずっとそれが目立っていて。


やけに優しくて。


こんな人が、自分の本当の父親ならいいのにとさえ思った。


「ちょっと待ってて」


そう言うと師匠はゆっくりと立ち上がり、事務所のキャビネットを開けて、何やらガサガサと取り出した。


それを手にすると、また俺の目の前の椅子に腰掛けた。


「これ、隆治君に…」


師匠に手渡されたのは茶色の封筒。


「なんですか?これ…」


「開けてみて」


師匠に言われるまま、その封を開くと。


なんと、札束が入っていた。


しかも、結構分厚い。


「えっ、どういうことです…?」


こんなものを渡される意味がわからず、ちょっと顔をしかめて問いかければ。



師匠はにっこり笑って言った。




「これはね…。





退職金だよ」