凪とスウェル

師匠はそんなふうに俺を思ってくれていたんだ。


弟子として、本当に純粋に俺を可愛がってくれていたんだ…。


そう思うと、胸が熱くなった。


「キミが千春のことを愛していないのは、僕はうすうす気づいていたよ」


「えぇっ?」


突然の師匠の言葉に、思わず大きな声が出た。


「いや…、まぁ僕も男だからね。

男が好きな女性を見つめる目には、敏感に気づいてしまうものなんだよね。

でも隆治君はどう見ても、千春をそういう対象で見ているようには見えなかったから…」


そう言われて、一気に恥ずかしさがこみ上げた。


「それでも男女のことはわからないことがあるものだし、二人に関しては、僕はそっと見守ろうと思ってたんだ。

だけど、やっぱり限界が来ちゃったんだね…」


「す、すみません…」


あまりに申し訳なくて、必死に頭を下げた。


「千春に遠慮があるだろうし、断れない気持ちもよくわかるよ。

そうやってキミが、自分の気持ちを押し殺してまで、娘の気持ちに応えようとしてたなんて。

若いのにすごいね…。

僕だったら、とてもじゃないけど出来ないよ…」