凪とスウェル

「ごめんね、隆治…。

ずっと、ごめんね…。

つらい思いばっかりさせて。

こんな母親だけどね、隆治のことは心から愛してたのよ。

あなたを産んだことを後悔したことなんて一度もない。

産んで良かったって、本当にそう思ってるのよ…」


母親の目から、大量の涙が流れた。


そんな…。


そんなこと…。


もっと早くに言ってくれたら良かったのに…。


生まれて来なきゃ良かったって、ずっと思い続けて生きて来たんだ。


アンタがそのひと言を、早く言ってくれてたら。


俺は救われていただろうに…。


「まぁ…。

もういいよ…。

一個だけ感謝していることもある」


「え…?」


「あの島に俺を連れて行ってくれたこと」


「どういう…意味?」


母親がコテンと首を傾げる。


「あの島に住んでいたから、すずに出会えたんだ。

行ってなきゃ、出会えてなかったからさ…」


「隆治…」


あのまま東京に住んでいたら、すずと知り合うことはなかったんだ。


どんな状況だったにせよ、すずに出会えたことは俺にとって宝だから…。