凪とスウェル

「ありがとう…。話してくれて…」


母親は優しい瞳をしていて、なんだか少し嬉しそうだった。


「いつの頃からかしら…。

隆治が考えていることが、さっぱりわからなくなっていたわ…。

わかりあえていた頃も、あったはずなのに…」


確かに、そうかもしれない。


さっきのおかゆと味噌汁。


あれを作ってくれていた頃は、少なくとも、もう少しお互いの気持ちがわかっていたはずだ。


「私もね、そうだったの」


「…なにが?」


「おじいちゃんよ…」


「じいちゃん?」


「うん…。中学になった頃からかな…。

なんだか急に会話が無くなってしまって。

自分の思ってること、ちっとも話さなくなってたの」


あぁ…。


確かじいちゃんもそんなことを言ってたな。


思春期の女の子と、どう接していいかわからなかったって…。


「私、早くに母親を亡くしてたからね…。

やっぱり同性にしか相談出来ないことって、沢山あって。

おじいちゃんは、結構厳しかったから。

なんだかだんだん、本音や言いたいことが言えなくなってたの…」