凪とスウェル

まだ好きだとも伝えていないのに。


噂が勝手に一人歩きをしていた。


でも、俺はそれが嬉しくて。


もっと広まればいいと思って、一度だけ嘘をついたんだ。


フッと笑った自分の声にビックリして、目が覚めた。


なんだ、夢か…。


なんか、すげー懐かしかったな…。


タイマーが切れたのか、ファンヒーターは既に切れていて。


部屋はひどくひんやりしていて、吐く息が白かった。


お互い裸のまま眠ったし、すずが心配だ。


早くスイッチを入れないと。


そう思って、隣を見ると…。


すずの姿はなかった。


あれ…?


シャワーでも浴びてるのかな?


それともトイレ?


ガバッと起き上がり、慌てて服を着てすずを探す。


だけどどこを探しても、すずの姿はなかった。



不安になり玄関を見ると。



すずのコートも靴も



もう既に無くなっていた。