凪とスウェル

高3の8月の、隆治が東京へ引っ越す前日。


あたしと隆治はこうして身体を重ねたっけ。


あの時は、せつなくて悲しくてしょうがなかった。


もうしばらく会えないんだと思うと、その悲しみの方が大きくて。


触れ合う身体の悦びは、ほとんど感じられなかった。


そして、今夜もまた。


あの日と同じように悲しみと寂しさでいっぱい。


唯一違うとしたら、あの時のように明るくなくて。


雨の音もうるさいから、あの日ほど静かじゃなくて。


見られる恥ずかしさや、声や音の恥ずかしさを消してくれる。


隆治だけを感じていられる。


今は何も考えたくない。


隆治と、ただこうしていられたら。


もう、それだけでいいと思った。