凪とスウェル

「どうして?

どうしてすぐに言ってくれなかった?

すぐ言ってくれてたら俺、キヨさんに話したのに」


「隆治…」


「俺らが好き同士だってこと、キヨさんに話せばいい。

そうしたらそんな、俺らを引き離すことなんかしないって」


そうだよ。


キヨさんなら、きっとわかってくれるに違いない。


「今から行こう!すずのマンションへ。

俺が…。

俺が話してやるから…っ」


靴を履こうとした俺の手を、ぎゅっと握るすず。


「隆治」


「な、何?」


急がなきゃと思うのに、すずの顔はやけに冷静だった。


「隆治…。

あたし…。

もうおばあちゃんと母さんに話したの…。

隆治が好きだって。

だから、東京に残りたいって…」


「え…?」


「それでもダメだったの…。

元気になるまで、ダメだって…」


「はぁっ?ウソだろ?」


すずは、ううんと首を横に振った。


「隆治にお別れを言いに行って来るって。

そう言って許可をもらって、マンションから出て来たの…」


そんな…っ。