凪とスウェル

「え…?」


頭の中がパニックで、すずの言った意味がわからない。


「島に…帰るって言った?」


俺の問いに、すずが頷く。


「ど、どうして?

どうして急にそんな…」


すずの手を握っている俺の手が震える。


そんな俺の手を、すずがぎゅっと握り返す。


「今、マンションにおばあちゃんと母さんが来てるの…。

実はね、入院中に言われてたの。

あたしの身体が心配だから、島に帰っておいでって…。

久しぶりに会ったおばあちゃんが、あたしの顔色を見てひどく心配して…。

このまま東京に置いておけないって言うの…」


顔色…?


そう言われてみれば、すずの顔色は入院していた時と同様で、全然良くなっていなかった。


「おばあちゃん、言い出したら聞かないの。

それは隆治もよくわかってるよね…?

明後日には、おばあちゃん達と島に帰ることになっちゃって…」


「ちょ、ちょっと待てよ!

大学は?

そ、卒業式だってあるだろう?

内定だってもらってるのに。

それはどうするんだよ」


すずは、はぁと長い息を吐いた。


「あたし、もう卒業単位はとうに取れてるの。

卒業式って、無理に出なくても大丈夫なんだって。

卒業証書はお父さんが後日取りに行くことになったよ…。

内定が決まってた会社も。

もう断ったの…」


すずの言葉に、俺は目を大きく見開いた。