凪とスウェル

「なぁ」


「ん?」


「東京とこっちは随分違うし、楽しめる施設も何もないけどさ。

でも俺はどんな環境にいても、楽しいことや面白いことって探せると思うんだよな」


「えっ?」


思わず八神を振り返る。


八神は夕日をじっと見つめていた。


その顔がなんだかすごく綺麗で、あたしはちょっと見とれてしまった。


「自分が今置かれてる環境の中で、楽しめることを探すんだ。

それが出来ないヤツはさ、東京だろうが島だろうが、結局は不満だらけになって、つまらなくなるんだと思う…」


あたしは後ろに下がって、またベンチに腰掛けた。


「急に…、どうしたの?」


思わず問いかけると。


「あ、いや…。

実は、さ。

俺も、東京生まれなんだ」


「えぇっ? そうなの?」


「うん…」


そうだったんだ。


それはビックリだわ。


てっきりこの島出身で、島育ちなんだと思ってたから。