凪とスウェル

この病室には、三人も人がいるのに。


空調の音だけがやけに耳について、すごく不気味だった。


ピリッと空気が張り詰め、千春ちゃんの動揺が手に取るように伝わって来る。


「なに…?これ…」


強張った表情のまま、千春ちゃんが声を出した。


「長谷川君とすずちゃん。

私に隠れて、ずっとこうして会ってたの…?」


「千春さん、あの…」


隆治の指に力がわずかに入る。


あたしと隆治は下手に身動きも取れず、絡めた指を離せなかった。


「いつからなの…?

もしかして、夏に二人で行った遊園地からそうなってたの?

急に仲良くなったなとは思ってたんだけど、そうなんでしょう!」


どうしよう。


一体何からどう説明したらいいの?


「長谷川君が急にアパートに引っ越したのって、こういうことだったのね?

私に隠れて、二人で会うためだったんだ。

私とは手も繋いでくれないくせに、すずちゃんとはそれ以上の関係があるんだ!」


「ち、違うの。千春ちゃん!

誤解だよっ」


あたしの言葉に、千春ちゃんがギッとあたしを睨んだ。