凪とスウェル

どうしたんだろうと戸惑いつつ、店の中に入ると、お父さんがレジの前にいた。


「千春、おかえり」


「ただいま。

ね、ねぇ、お父さん。

今、長谷川君とすれ違ったんだけど。

彼、どうしたの?

閉店まで、まだまだ時間があるのに…」


私がそう言うと、お父さんが顎に手を当てて首を傾げた。


「それがさ、用事があるから早退させて欲しいって言うんだよ」


「早退…?」


長谷川君が早退なんて珍しい。


多分、初めてのことじゃないかな…?


「午後からずっと様子がおかしくてね。

顔色が悪かったんだよ。

体調でも悪かったのかな?」


そう言われてみたら、確かにすごく様子がおかしかった。


目が泳いでいたし、落ち着きがなかった。


なんだか心配だな…。


「お父さん。私、長谷川君の様子、見て来ていい?

体調悪いなら心配だし…」


「それは、まぁかまわないけど?

好きにしたらいいよ」


お父さんがそう言うので、私は店をすぐに飛び出した。