「とりあえず、今から隆治のところへ行くからな」


そう言ってエンジンをかける右京君。


「えぇっ?本気?」


「冗談でこんなことするか、アホ!」


「くっ」


アホって…。


何気に失礼なんですけど。


やっぱ右京君と隆治って、どことなく似ているかも…。





右京君が車を走らせて15分くらいした頃、2階建てのさほど大きくないアパートの駐車場に到着した。


「ここだよ。

ここの2階。

右端の部屋」


「こ、ここ?」


「俺はもう帰るけど、大丈夫だよな?」


「えぇっ?右京君、帰っちゃうの?」


「当たり前だろ~?俺は明日も仕事なのー。

さっ。もう行け」


シッシッと、まるで犬でも追い払うかのような仕草をする右京君。


「で、でも…」


「隆治なら大丈夫だから。

最近アイツが元気なかったのは、お前に会えなかったからだよ。

会ってやれよ…。な?」


右京君が優しく笑うから、あたしはうんと頷いた。


意を決してドアを開け車を降りると、右京君は軽く手を振って、あっという間に行ってしまった。


あたしはふぅと息を吐いて、アパートへと足を運んだ。