凪とスウェル

お前と電話が繋がって。


お前がすぐ近くにいるって聞いて。


居ても立ってもいられなくなって、駅へと走ったんだと思う。


隆治、本当はきっとお前に会いたかったはずだ。


会いたくて会いたくて、たまらなかったはずだ。


会ったって良かったんだよ。


お前に会って、全て事情を話して。


心の支えになってもらったって、誰も文句なんか言いやしないよ。


だけど、アイツはそれをしなかった。


どうしてだか、俺には全く理解出来ないけど。


でも、よくよく考えてみたら、それがアイツの性格なんだ。


アイツって、自分のことより周りの人のことばかり考えてる。


実際俺にも、サエにはこの事故のことを絶対言うなって口止めしてたんだ。


じゃなきゃ、サエが自分を責めてしまうからって。


だからサエは未だに、この事故のことを知らない…。


アイツはサエに特に優しい。


あの時は、それがどうしてだかわからなかったけど。




サエが、お前に似ているからだったんだな…。