凪とスウェル

隆治の吐いたセリフに、ピクッと頬の筋肉が動いた。


すずも確かそう言っていた。


隆治は寂しがり屋だから、遠距離なんて無理だったって。


だから隆治は、すずと別れたのだと…。


それは間違いじゃないようだけど…。


「まぁ。それはいいんだけどさ。

俺にはどうも理解出来ないんだ」


「何が…?」


机に頬杖をついて、隆治は少し面倒くさそうに呟いた。


「だってさ、もうとっくに別れたんだろう?

それなのに、どうしてその別れた女の名前を、今も寝言で呼ぶんだよ」


今にも泣きそうな声で。


せつなそうに、苦しそうに。


「あれはなんでなんだよ…」


千春ちゃんという彼女がいるっていうのに。


なぜあんなに何度も呼ぶんだよ。


“すず”と言う名を、お前は…。