凪とスウェル

俺の言葉に、隆治の動きが止まる。


隆治は少しミステリアスなところがあって、何を考えているのかわからない時があるけれど。


でも、俺にはわかる。


コイツは今、明らかに動揺している…。


「高校の頃からずっと言ってたよ。

ここに泊まるたびにな。

“すず”って、一体誰なんだよ?」


知っていて聞くのは悪いと思うけど、お前の口から聞いてみたかった。


スッと腕組みをして鋭い視線を向ければ、隆治は一度目を逸らして、また俺の方をじっと見た。


「あぁ…。

元カノだよ。

島にいた頃に付き合ってた子…」


意外にあっさり答える隆治。


さすがに言い逃れは出来ないと思ったか?


「でもお前、彼女はいないって言ってたじゃん。

なんで嘘をついてた?」


俺が何度聞いても、彼女なんていないとお前はそう言い続けていた。


一体何の意味があって、あそこまで頑なに否定していたのだろうか。


「えー、だってさ。

その彼女とは、東京に引っ越す前に別れたし。

だから右京と知り合った時には、本当に彼女なんていなかったんだ 。

俺、嘘はついてねぇよ」