「はぁ?寝言?」


隆治が大きく目を見開く。


まぁ、そんなの自分じゃ気づかないから、驚くのも無理ないよな。


「えー、マジで?

それはちょっと恥ずかしいな。

俺、なんて言ってた?

腹減ったーとか?」


思わず、フッと笑ってしまった。


そんな寝言だったら、すぐ次の日に言ってるっつうの。


「残念だけど、そんなんじゃない。

お前が言う寝言は毎回同じだよ。

言うのは、その言葉だけ…」


隆治が軽く口を尖らせる。


「えー…?何…?」


本当に、見当もつかないのだろうか。


もう何年も、その言葉だけを言い続けているというのに…。


「教えて欲しい?」


「う、うん…」


隆治は戸惑いつつも頷いた。


俺は一度深呼吸をすると、隆治の澄んだ瞳を真っ直ぐに見た。


「お前が言ってた寝言はな…。






“すず”だよ…」