凪とスウェル

「だって隆治、彼女がいるじゃん。

普通はイヤじゃない?

自分の彼氏が他の女の子と二人で飲んだりしたら…」


あたしの言葉に、隆治の目が少し据わる。


「千春さんは彼女じゃねーぞ」


「へ…?」


どういう…意味?


何言ってるの?


「千春さんは、ただの彼女じゃない。

俺の婚約者だ」


グサッと来ることを平気な顔で言われて、本気で殴ってやろうかと思った。


「つまり、結婚する相手なのー。わかる?」


「ちょっ、あんた少し酔ってない?」


顔も赤いし、ちょっと呂律が怪しい気がする。


「結婚って、ずっとその人と一緒にいるってことなんだー。

ガキ作ってー、育てるんだぞー」


思わずケッと言ってしまった。


そんなの言われなくてもわかってるわよ!


「そのガキが結婚してー、またガキ作ってー、俺はじいさんになる」


「あんた、大丈夫?

酔い過ぎなんじゃない?」


「俺の人生はー、そうやって終わっていくのー」


隆治はそう言うと、缶を畳の上に置いて、ゴロンと布団に横になってしまった。