凪とスウェル

「だって、叶わなかったろ…?」


あたしの隣に座る隆治の横顔は、なぜか悲しそうで。


どうしてなんだろう。


時々、隆治がわからなくなる。


そもそも、その願い事がダメになってしまったのは。


隆治があたしを振ったからなのに…。


どう返事していいかわからず、あたしはただ黙って海を眺めた。


隆治も特に何も言わず、同じように海を眺めていた。





しばらく海を眺めた後、隆治が夕日を見たいと言い出して。


あたしが島に来たばかりの頃に連れて行ってくれた、あの岬へと車を走らせた。


でもまだまだ日が長くて、なかなか太陽が沈まないので、しばらくベンチでおしゃべりをして、あたし達は家に帰ることにした。


みんなで都市公園に行った時の隆治は、あたしに対してひどく口が悪かったのに。


今日の隆治は少し元気がなくて。


終始穏やかで、静かな会話をして過ごしたのだった。