凪とスウェル

料理が運ばれて来ると、筋肉質のその彼は、ものすごい勢いでご飯を口に運び始めた。


彼が黙々と食事をしている間、片岡君が教えてくれたのだけど、彼は建築現場で働いているのだとか。


今日はたまたま仕事が早く終わっただけで、普段はもっと遅くまで仕事をしているらしい。


こんな日はめったにないラッキーなことなのだそうで。


でも、だからって友達の初デートを邪魔する神経は理解に苦しむけれど。


お腹が満たされて落ち着いたのか、彼がようやく口を開いた。


「あっくん。彼女とはどこで知り合ったの?」


爪楊枝を歯の隙間に差しながら、問いかける彼。


「あー、うん。長谷川の彼女の紹介で」


「隆治の?へぇー。
じゃあ、彼女も△△大学なんだ。学年は?一個下?」


一応質問しているものの、彼はあたしにあまり興味はなさそうだ。


「右京。すずちゃんは僕らと同い年だよ」


片岡君がにっこり笑って言った。


その時だった。


それまであたしと目も合わせようともしなかった彼が、突然あたしに鋭い視線を向けた。