凪とスウェル

定食屋さんに向かう間、片岡君が目の前の彼のことをこっそり教えてくれた。


彼は一之瀬右京(いちのせ うきょう)といって、高3の時に同じクラスだったのだそうだ。


もともとは特に仲良くなかったのだけど、隆治と彼が仲が良いので、隆治を通して友達になり、三人でよく遊んでいたのだとか。


片岡君が言うには、隆治は片岡君以上にこの彼と特に仲が良いらしい。


目の前を歩く彼は、やたら堂々としていて。


いや、堂々と言うより、偉そうに歩いていて。


なんだか怖いものなしのような、そんな雰囲気をかもし出していた。


一之瀬というその男の人は、少し古そうな飲食店の前で足を止めると、ガラガラと扉を開けて中に入って行った。


まだ時間も早いせいか、お客さんはほとんど居ないようだった。


4人掛けのテーブル席に腰掛け、それぞれ注文をすると、あたしはとりあえず水をぐっと飲み干した。


あたしの前に座る二人の男性。


そのいずれもが隆治の親友だなんて。


ついこの間まで、こんな状態になろうとは思いもしなかったな…。