凪とスウェル

それからというもの、大学で千春ちゃんに会うことはなくて。


もともと学年も学部も違うし、意識して会わなければ、あまり接点はなかった。


片岡さんから何度か誘いのメールが来ていたけれど、あたしはなんだかんだと理由を付けて断っていた。


こうやってやり過ごしていれば、次第に隆治との縁は遠退く。


そう思いながら過ごしていた、ある日の朝のこと。


大学にいくと、あのベンチに千春ちゃんの姿があった。


千春ちゃんはあたしに気がつくと、立ち上がって駆けつけてきた。


「すずちゃん、おはよ」


「おはよう。どうしたの?」


「今、ちょっと話せるかな?」


実はこの頃、あたしは以前より早起きをして、お父さんと本当に朝ごはんを食べていた。


そのお陰で時間にも余裕が出来て、講義にも充分間に合うように登校していた。


千春ちゃんがあたしに話ってなんだろうって、
ちょっと複雑な気持ちだったけど。


講義が始まるまでならと言って、あたし達はベンチに腰掛けた。