「そう言えば、千春ちゃん。

この前、あたしに彼氏を会わせたいって言ってたけど。

それはどうして?」


友達だから、と言われたら確かにそうなんだけど。


“絶対”会わせてあげたいと言っていたのが、なんとなく引っ掛かってたんだよね…。


「んー。彼が来てから話そうと思ってたけど。

まぁ、いいか。話しちゃおう」


「うんうん。教えて!」


あたしは思わず身を乗り出した。


「私の彼ね。実はうちのパン屋で働いてる従業員なの」


「え、そうなの?」


「私の父、数年前に身体を壊しちゃってね。

店には出てるんだけど、あまり無理は出来なくて。

だから今はその長谷川君が、うちのパンを作ってるの」


「えぇっ?ってことは」


「そう!

すずちゃんが美味しいって言って食べてるパンは、実は私の彼が作ったパンだったの」


「えー!まじでーーー?」