凪とスウェル

「隆治っ!」


思わず大きな声で叫んでいた。


振り返った隆治が、足をピタリと止める。


あたしに気づいたお母さんが、隆治に何か言って、先にフェリーに乗り込んで行った。


あたしは急いで自転車を走らせ、道路脇に自転車を停めた。


「すずっ」


隆治がビックリして駆け寄って来る。


「良かった。間に合って…」


あたしと隆治は向かい合うようにして立つと、ぎゅっと両手を繋いだ。


「隆治。

どうしても会いたくて…。

もう会えないかもしれないと思ったけど、それでもここまで来ちゃった」


息を切らしながらそう告げると、隆治はにっこり笑った。


「そうなんだ。

すげぇ嬉しい…。

俺も、もう一度会いたかったから…」


隆治の言葉に、あたしは気がつけば涙を流していた。