凪とスウェル

お店に着くと、店舗のドアの鍵が開いていた。


無用心だなと思い、とりあえず鍵をかけた。


1階には隆治の姿はなく、あたしは2階の隆治の部屋へと向かった。


ギィと扉を開けると、散らかった部屋の中にポツンと、壁にもたれて座る隆治の姿が目に入った。


「隆治…」


ゆっくりと隆治に近づき、敷きっ放しの布団の上にあたしも腰を下ろす。


壁を背にして、隆治の横に並ぶように座った。


隆治はあたしをチラリ見ると、ふぅと長い息を吐いた。


「とりあえず、一旦落ち着いたっていうか。

親戚も、ほとんどみんな帰ったよ…」


「そう…」


隆治の目に力が無くて、なんだか泣きそうになってしまう。


「突然過ぎて、全然実感が湧かないんだ。

なんか夢見てるみたいで…」


「隆治…」


隆治、ちょっと痩せた気がする。


あんまり寝てないんだろうな。


目の下にクマが出来てる…。


「すず…。

お前に言わないといけないことがあって、それで今日呼んだんだ…」


「え…?」


言わないといけないこと…?


「なに…?」


何なの?


やだ…。


イヤな予感がする…。



「すず…。



俺ね…。



東京へ行くことになった…」