凪とスウェル

「すず…」


名前を呼ばれて、あたしの身体は硬直してしまう。


一体、何を言われるんだろう。


怖くて怖くて、もうここから逃げ出したいくらいだ。


「俺、ちょっと今日、勉強どころじゃねーや…」


「へっ?」


べ、勉強?


キスのことに触れるかと思ったのに、勉強と言われてあたしはガクッと力が抜けた。


布団にもたれかかる隆治。


「母親に会って、やっぱかなり動揺してる…」


「隆治…」


隆治がゆっくりあたしに視線を移す。


「お前はちゃんと勉強するんだろ?

家に帰って、やったらいいよ。

俺、明日のテストは捨てる。

多少はやってるし、それでも普段よりは良い点採れるんじゃねーかな…」


隆治は笑顔には満たない程度に、口角を上げた。


「大丈夫?」


「ん?」


「平気?」


あたしは、なんだか隆治が心配だ…。