凪とスウェル

「あたし、初日の出って見たことないんだ。

大体、元旦のその時間は寝ちゃってるから」


あたしがそう言うと、隆治は瞼を上げて、フッと鼻で笑った。


「まぁ東京の街中じゃ、水平線の朝日は見れないしな。

せいぜいビルの隙間から見える、既に昇った太陽だろ?」


「うん。確かにそうだね」


「俺だってこっち来るまで見たことなかったよ」


「だよね。そんなもんだよねー」


「けど、こっちに来て初めて迎えた正月に、急に思い立って朝日を見に行ったんだ。

その日がたまたま今日みたいに、すげー晴れててさ。

むっちゃ綺麗だったんだ。

それからはもう毎年。

ここに来て見てる」


「へぇ…」


きっとこれも、隆治の島のお気に入りの一つなんだろうなあ…。