ツンデレくんをくれ!

「じゃ、奈子さんの奢りな」


中出がどや顔で言ってくるもんだから、そりゃあ毒も吐きたくなる。


「くっそう、腹立つ。なんでじゃんけんなんだよ」

「ご飯行きたいって言ったの奈子さんやん。奢るのは当然」

「普通、ここは稼ぎのいい男のお前が払うもんだろうが」

「やだ。ぜってー奢らん」

「仲いいねえ、二人とも」


傍で見ていた志満ちゃんがくつくつ笑っている。


「おい、中出、ここは奢ってやれ」

「男の意地を見せてやれ」


中出も男子に言われている。


「中出、みんなが言ってるけど」

「絶対やだ。人のために金なんか使わん」


こいつは絶対折れない奴だ。


まあ、こんなに言われながらも一緒に行ってくれるだけよしとするか。


あれから、あたしは志満ちゃんにすべてを話した。


そこまではいいんだけど、テニス部中にまでなぜかあたし達のことが広まってしまった。


なんで? と中出に聞いたら、奈子さんの声がでかいからとなぜか罪を着せられた。


「じゃ、俺帰るわ」

「ちょ、あたしも連れてけよっ」


さっさと車に乗り込む中出の後についていく。


「えー本当に行くんけ?」と心底嫌そうな顔をした中出の肩をべちっと叩いて「さっさと出す!」と急かしてみた。