ツンデレくんをくれ!

そんな生活が三週間続いた。


部活やバイトの最中ならまだしも、一瞬でも気を抜いてしまったら途端にフラフラと足元がおぼつかなくなっていた。


何も知らない志満ちゃんには一週間を過ぎたあたりから心配されていたけど、なんとかごまかしてきた。


でも、とうとう我慢の限界がきたようだ。


「奈子、今日ご飯食べに行くよ」


部活が終わった後、志満ちゃんに強い口調で言われた。


いつもは行かんけ? と同意を求めて来るのに、今日は断言してきた。


志満ちゃんには、言った方がいいよな。


これだけ心配をかけてきて、これ以上隠し通すことはあたしには至難の業だ。


別に隠しているつもりはなかったけど、そもそも中出とのことを言っていなかったから一から全部言うことが面倒だったのだ。


面倒とか、志満ちゃんには悪いことをしたな。


「うん。でもあたし、今月もうピンチだよ」

「いいよ、私が奢るから」

「ごちそうさまでーすっ」


ラーメンにするか牛丼にするかとあたし達が話していたら、その前に中出が現れた。


「中出、どうかしたんけ?」


志満ちゃんは中出に反応したけど、あたしはいまだに顔すら見ることができなかった。


「えーと……加山さん、ちょっと、奈子さん借りていい?」


あたしの名前が出てきたことに驚いてしまった。


今更何の用事があるというのだ。


三週間も音沙汰無しだったくせに。


あたしは志満ちゃんとご飯食べに行きたいってのに。


邪魔すんなよ。


でも、あたしの事情など何も知らない志満ちゃんは、ニコニコしながら「どうぞどうぞ。ごゆっくりー」なんて、あっさりあたしを手放してしまった。


「し、志満ちゃ……」

「ご飯は明日ねー。奈子、ごゆっくりー」


縋るような眼差しを向けるあたしを無視して、ニコニコと笑みを浮かべながら、志満ちゃんはさっさと帰ってしまった。


…………逃げ場を失ってしまった。