「あたし、コンビニ店員やってるから、けっこう見ちゃうんだよね。他のコンビニの店員はどんなことしてるのかなって」

「今の店員は?」

「そうじゃなくて、見習ってるってこと」

「レジもやるんけ?」

「やるよ。あれ、意外に大変だよ」


中出の運転している姿を、あたしは目だけを動かしてちらちら見ていた。


本当は助手席じゃなくて後部座席から中出を見ていたいけど、なんだか変に思われそうだし。


運転姿がけっこう様になっている。


タメなのに、急に隣の男が大人になった気がして、妙に寂しい気持ちになる。


「今日、家に誰かいるの?」

「いたらお菓子でもつられねーし」

「ふうん」


じゃあ、誰もいないのか。


そりゃそうか。偽物の彼女なんか家族に見られたくないに決まっている。   


まあ、こいつは結婚でもしない限り、彼女なんて家族には紹介しなさそうだけど。


「中出は」

「ん」

「いつからテニスやってたの?」

「高校」

「中学は?」

「ソフテニやってた」

「え、じゃあ、あたしと一緒じゃん」


まさかの回答でびっくりした。


「中学時代の中出、かあ…………」


あたしは五年前の中出を妄想してみた。


学ランに着せられて、身長はまだここまで大きくなくて、黒髪で、無愛想なのはそのままで…………。


「ただの地味な中学生にしか見えない」

「何想像しとるんけ」


中出がちらりとあたしを見てすぐに前を向いた。


「あんたはやっぱり茶髪が似合うわ」

「ふうん」


だって、黒髪の中出とか想像できない。


たぶん今よりもっと地味な印象を受けると思う。


「暗めだよね、色」

「もっと明るくしたいけど」

「えー、中出は暗めの方が合ってると思うけど」


もっと明るくって、金髪に近くなるってことでしょ?


「……ふざけたようにしか見えないからやめときな」

「奈子さん、何考えてるん?」


真顔で言われた。


どうやらあたしを見下したらしい。