「ほんと、いまだに信じらんない。今も口説かれてんの?」

「ほぼ毎日」

「もはや佐々木さんを尊敬する。少しは優しくしてあげたら?」

「めんどい」

「まじでかわいそう……」


まあ、中出がそんなことを思っていなければ、あたしもこうして三ヶ月も中出の傍にいられなかったから、個人的には嬉しいんだけど。


「課題忙しかったから、いまだに佐々木さんを見れてないんだよね。今度工学部に行こうかな」

「なんで?」

「なんでって、佐々木さんを見に行きたいからだよ。中出なんかわざわざ見に行ってあげないよ」

「頼んどらんし」

「あ、でも、ほぼ毎日口説かれてるってことは、中出もついでに見ちゃうじゃん。あーやだやだ」

「俺も会いたくない。来んな」


こんな毒を吐かれても、散々中出をけなすようなことを言っても、内心は嬉しいのだ。


そんなこと絶対顔には出さないけど。


相手に好きという気持ちをばれたくないというよりは、この頃にはそんな気持ちなんか表に出してやんないという思いの方が強くなっていた。