吉井くんは、どこか焦っている感じだった。
部活の練習着のまま、バッグを斜めがけして走ってきて、
私に気づくと、走るのをやめて立ち止まった。
「なんか......あったの?」
思い切って吉井くんに聞くと、
吉井くんは自分の髪をくしゃくしゃっとして下を向いた。
「愛莉が、校門の所にいるからすぐ来いって......」
校門に愛莉さんが......
「だって、吉井くん部活は?」
吉井くんは黙ってしまった。
「吉井くんはそれでいいの?
部活の最中に、自分のところにすぐ来いなんて.....
そんなの......愛莉さんわがままだよ!!!」
愛莉さんのこと、悪く言ったらいけないってわかっていたけど、
どうしても我慢できなかった。
「吉井くんのこと、もっと大切に......」
「鈴には、関係ない。
俺と彼女の問題だから。鈴には関係ない」
俺と、彼女.......
吉井くんが、すっと私の横を通り過ぎた。
関係ない。
そっか、私はもう関係ないんだ......
もう、ダメだ.......
下を向いたら、ひとつぶ涙がまっすぐ下に落ちた。
落ちて、落ちて、
声が出そうになり、口元を押さえた時、
「宇崎!」
海くんの声がして顔を上げた。



