「え!絶対に違うよ!海くんは......違うよ!」
海くんの好きな人.......
そんなこと、考えたこともなかった。
「確認してみたら?ほら、道場はあっち、体育館の隣」
沙希にうしろから両肩を掴まれて、くるっと向きを変えられた。
「失恋を乗り越えるのは、新しい恋に限るよ!じゃあ!」
背中をぽんと押されて、
振り向くと、沙希が靴を履いて玄関から出て行くのが見えた。
確認って......えっ????
いや、私を好きかどうかじゃなくて、
好きな子がいるのに、私といていいのかを確認したい。
そうだよ、そこだよ。
剣道場の前で、待ってみようかな......
私は廊下を歩いて、体育館に続く渡り廊下に出た。
渡り廊下の途中に、剣道場に続く道がつながっていて、
体育館から少し離れた隣に、剣道場がある。
私のいる場所からは、体育館の方が断然近くて、
バスケ部の音しか聞こえない。
校舎と渡り廊下をつなぐ、この3段しかない階段。
吉井くんを思い出してしまうこの風景に、ぎゅっと目を閉じた。
そして目を開けると、体育館の中から吉井くんが飛び出してきた。



