君の『好き』【完】








「振られた?」


放課後、沙希と二人教室に残って、


吉井くんとのことを話した。






「やっぱ、幼なじみには勝てないよ」



「幼なじみかぁ。それは強敵だなぁ......」





私の前の席に座った沙希が、はぁとため息をついた。






沙希の彼氏が来るまでの一時間、沙希は吉井くんの話を聞いてくれて、


いっぱい慰めてくれた。





「朝、一緒に歩いていた隣のクラスの渡瀬くんは?どういう関係?」






1時間経ち、


教室を出て廊下を歩きながら、沙希が不思議そうに聞いてきた。



「あぁ、海くん?海くんは同中で、近所に住んでるの」



「じゃぁ、鈴の幼なじみだ」



「えっ?海くんは幼なじみじゃないよ。




中1の時に、海くんが近所に引っ越してきたから」




沙希は、ちょっと納得できない感じに首を傾げた。







「ふーん。あの渡瀬くんって、すごいモテるよね」



「海くん?そうなの?」


中学の頃は、後輩たちからは人気があったけど......




下駄箱の前で立ち止まった。





「知らないの?結構告られてるよ。


だって顔が超イケメンじゃん、アイドルっぽいっていうの?


かわいい顔して、でも剣道部じゃん。そのギャップ?


私の同中の友達が、渡瀬くんのことが好きで、



告ったんだけど、好きな子がいるって断られたんだよ」



「えっ、海くん、好きな子いるんだ......」





知らなかった。


そんな、好きな子がいるのに、私なんかと一緒にいていいのかな......




「鈴、吉井くんに振られたんなら、渡瀬くんに乗り換えれば?」





「ちょっ、乗り換えるってなんか嫌な言葉だな......




海くんは、そんなんじゃないから。




海くんだって、そんな気ないだろうし」




「そうかなぁ.....渡瀬くんって女子とあんま喋んないんだって。



でも朝、鈴と普通に喋ってたじゃん。



渡瀬くんの好きな人って鈴なんじゃないの?」